「あの後からずっとお前は眠り続けた」


“あの後”というのはきっと、光姫の心音が二度目も聞こえないと言われた時。


「だけどその方がいいと思った。……今のお前に現実を受け入れることは酷だろう。だから──」

「じゃあ……」

「先生に言われた通り、翌日……手術した」


それが意味することはもう分かる。

手術したということはもう、美姫がお腹にいないということ。


こんなにも早く外の世界に放り出してしまった。


そっか……

あの夢の痛みはきっと、美姫の苦しみだったんだ。


『ママ。苦しいよ……息ができないよ……』


そう美姫が必死に訴えていたんだ。


“当然の報い”と言ったもう一人のあたしは正しい。

守れなかったあたしに責任がある。


「……ッ」


あたしに涙する権利なんてないかもしれない。

だけど止まらなかった。


「光姫」


少し切なく響く悠河の声とともに、強い腕に包まれた。


「自分一人を責めるな。誰のせいでもない」

「違う……」

「違わない。美姫の運命を決めたのは、神様だから」

「違う……違う……」


神様がこんな悲しい運命を決めるはずがない。