旦那様は社長 *②巻*


信じよう。

きっと大丈夫だから。


奇跡を信じて診察台に上る。

その間、ずっと悠河は手を握ってくれていた。


先生の診察が始まると、その手の力はどんどん強くなる。


怖くなってきつく目を閉じると、悠河が優しく頭を撫でてくれた。


「悠河?」


あたしの呼びかけに、悠河は笑顔で答える。


それだけで胸がいっぱいになって涙が溢れた。


悠河が側にいてくれてよかった。

心の底からそう思える。


だけど……

奇跡を信じたあたしたちに告げられたのは、残酷な現実だった。


「やっぱり……聞こえないわ」



聞こえない?

美姫はやっぱり、返事をしてくれないの?


あたしたちに奇跡は起こらない?


どうして……

どうしてなの……?



「美姫……」


だんだんと意識が朦朧としてきて、あたしは静かに目を閉じた。


「光姫!?光姫──ッ」


必死にあたしの名前を呼ぶ悠河の声が聞こえる。


だけどあたし。

もう起きたくない……。



ごめんね悠河。


ごめんね……美姫……。