旦那様は社長 *②巻*


「よかった……。ちゃんと来たのね」


診察室の扉を開けると、あたしたち2人の姿を確認した先生が安堵のため息をはいた。


「もう来ないんじゃないかって心配だったのよ」

「ごめんなさい。逃げようかと思いました」


先生はあたしたちのことなんて何もかも分かっている様子。


きっと、どんな決意であたしたちがここへ来たのかも伝わっていると思う。


「先生……」

「奇跡を信じましょう。信じているんでしょう?あなたたちも」


複雑な笑みを浮かべる先生。

先生にも、今は信じることしかできないんだ。


悠河はあたしをゆっくりと床に下ろし、左手であたしの右手をギュウッと握った。


それが答え。

今のあたしと悠河の。


先生は安心したように微笑んで、あたしを診察台へ誘導した。


心臓がバクバクいっている。

怖い……

逃げたい……!!


そう思った時、繋いだ手に力が加わった。


見上げたあたしの額に悠河のキスが降ってくる。


「大丈夫だ」


たった一言。

その言葉があたしに前に進む勇気をくれる。