「よかった……。ちゃんと来たのね」
診察室の扉を開けると、あたしたち2人の姿を確認した先生が安堵のため息をはいた。
「もう来ないんじゃないかって心配だったのよ」
「ごめんなさい。逃げようかと思いました」
先生はあたしたちのことなんて何もかも分かっている様子。
きっと、どんな決意であたしたちがここへ来たのかも伝わっていると思う。
「先生……」
「奇跡を信じましょう。信じているんでしょう?あなたたちも」
複雑な笑みを浮かべる先生。
先生にも、今は信じることしかできないんだ。
悠河はあたしをゆっくりと床に下ろし、左手であたしの右手をギュウッと握った。
それが答え。
今のあたしと悠河の。
先生は安心したように微笑んで、あたしを診察台へ誘導した。
心臓がバクバクいっている。
怖い……
逃げたい……!!
そう思った時、繋いだ手に力が加わった。
見上げたあたしの額に悠河のキスが降ってくる。
「大丈夫だ」
たった一言。
その言葉があたしに前に進む勇気をくれる。

