だけど。
大切なことに気づいた。
あたしとまったく同じ気持ちでいてくれる人がすぐ側にいることに。
あたしが悲しい時、一緒に悲しんでくれる。
泣いてくれる。
辛い場所から連れ去ろうとしてくれる。
あたしたちはもう運命共同体。
悠河の悲しみはあたしの悲しみ。
悠河の喜びはあたしの喜び。
その逆も同じこと。
「笑って、悠河。あたしも苦しい。……悠河の悲しむ顔見るの」
泣くのはきっと今じゃない。
「あたしたち、言ってることとやってること違うね」
口では“諦めない”とか“信じる”なんて言ってるのに、2人とも心のどこかで諦めてた。
だってさっきからずっとあたしたち、“もしも”の話しかしていない。
「2人とも諦めてるなんて美姫が知ったら、怒って本当にいなくなっちゃう」
「……そうだな」
「もしもの話はやめよう?必要ないよ、本当に信じてるなら」
「光姫」
「悠河が信じるならあたしも信じる。今度こそ」
微笑みあっていると、急に悠河の携帯が震えた。
見えてしまった名前。
「行こう、悠河。2人で一緒に」
「ああ」
「後で一緒に泣こうね。嬉し涙限定だけど」
悠河は笑っていた。
そしてどちらからともなく唇を重ねる。
少し苦くて切ない涙味のキス。
唇を離し、もう一度見つめあった後、エレベーターを開けて向かった。
今もバイブの音が響く、電話の主の元へ──…

