旦那様は社長 *②巻*


エレベーターは5階に止まったまま。

悠河もまだ動かない。



「怖いよ、情けねーけど。あれだけ“信じろ”とか言っておきながら……」


「悠河……ごめんね……」


昨日から何度口にしたかな。「ごめん」って言葉を。


だけど、何度言っても足りないんじゃないかって思う。


「謝るな、光姫。何度も言っただろ?お前は悪くない」

「だって……」


悠河をこんなにも不安にさせているのはあたしだよ。


「誤解するなよ。光姫」

「え……」

「オレが怖いのは美姫のこともあるけど、それより……」


ジッとあたしを見下ろす悠河。

そしてとても真剣な顔で言った。


「もし万が一……美姫に何かあった時」


悠河の喉仏がゴクンと上下する。


“もしも”の話なのに、なんだか今のあたしたちには現実味があって胸が痛い。


だけど一生懸命悠河が何かを伝えようとしてくれている。


あたしはただ黙って悠河の目を見つめた。



「光姫が苦しむ姿を見るのが怖い」