「……光姫。着いたぞ。起きれるか?」
「ん……」
いつの間にか眠っていたらしく、悠河に抱き抱えられて目が覚めた。
「大丈夫か?」
不安げに見つめる悠河の瞳が、俯くあたしの顔を覗きこむ。
「下ろして?自分で歩くよ」
なんだか悠河に迷惑ばかりかけている気がして、気が引けた。
「無理するな。寝てないくせに」
「……悠河も同じじゃない」
気づいてたよ。
悠河が何度も寝返りをうつ時は、眠れない時。
見上げると、悠河は困ったように笑っていた。
病院の中に入ると、みんながあたしたちを振り返る。
当たり前か……。
ここは総合病院だから。
産婦人科のある5階に行くまで、周りの視線をチクチク感じながらもあたしは黙って抱かれていた。
こうして悠河の温もりを感じていないと、不安でたまらない。
エレベーターに乗り込み密室に悠河と2人きりになった時、初めて本音が漏れた。
「あたし……行きたくない」

