旦那様は社長 *②巻*


「……光姫。着いたぞ。起きれるか?」

「ん……」


いつの間にか眠っていたらしく、悠河に抱き抱えられて目が覚めた。


「大丈夫か?」


不安げに見つめる悠河の瞳が、俯くあたしの顔を覗きこむ。


「下ろして?自分で歩くよ」


なんだか悠河に迷惑ばかりかけている気がして、気が引けた。


「無理するな。寝てないくせに」

「……悠河も同じじゃない」


気づいてたよ。

悠河が何度も寝返りをうつ時は、眠れない時。


見上げると、悠河は困ったように笑っていた。


病院の中に入ると、みんながあたしたちを振り返る。

当たり前か……。

ここは総合病院だから。


産婦人科のある5階に行くまで、周りの視線をチクチク感じながらもあたしは黙って抱かれていた。


こうして悠河の温もりを感じていないと、不安でたまらない。


エレベーターに乗り込み密室に悠河と2人きりになった時、初めて本音が漏れた。




「あたし……行きたくない」