「光姫。気分が悪かったら横になっていいからな」
翌日。
スッカリ気力を失ったあたしを抱き上げ、車の後部座席まで運ぶ悠河。
まるで人形になってしまったように無反応なあたしの頭を、悠河はクシャッと撫でた。
「笑ってろ、光姫。どんな時も」
「……」
「お前が笑えば、美姫もきっと幸せだ」
そう言ってバタンと車のドアを閉めた。
いつもは大好きなこの時間。
悠河と2人でドライブするこの時間。
だけど今日は苦しい。
だってドライブじゃないから。
「美姫……」
気がつけば、自然とその名前を口にしていた。
この中で生きてるんでしょう?
微かに膨らんだ気がするお腹に手を置いて、静かに目を閉じた。
──『もう泣くな、光姫』
蘇る昨日の記憶。
泣き疲れ、脱け殻のように呆然としていたあたしに悠河が言った。
──『2人で守ろう、光姫。希望は捨てるな』
だけどあたしは“うん”の一言が言えなかった。
なんだかもう……
不安に押し潰されて。
希望を持てない気がしていたんだ。

