旦那様は社長 *②巻*


「光姫。気分が悪かったら横になっていいからな」


翌日。

スッカリ気力を失ったあたしを抱き上げ、車の後部座席まで運ぶ悠河。


まるで人形になってしまったように無反応なあたしの頭を、悠河はクシャッと撫でた。


「笑ってろ、光姫。どんな時も」

「……」

「お前が笑えば、美姫もきっと幸せだ」


そう言ってバタンと車のドアを閉めた。


いつもは大好きなこの時間。

悠河と2人でドライブするこの時間。


だけど今日は苦しい。

だってドライブじゃないから。


「美姫……」


気がつけば、自然とその名前を口にしていた。


この中で生きてるんでしょう?


微かに膨らんだ気がするお腹に手を置いて、静かに目を閉じた。


──『もう泣くな、光姫』


蘇る昨日の記憶。

泣き疲れ、脱け殻のように呆然としていたあたしに悠河が言った。


──『2人で守ろう、光姫。希望は捨てるな』


だけどあたしは“うん”の一言が言えなかった。


なんだかもう……


不安に押し潰されて。


希望を持てない気がしていたんだ。