敢えて決定的な言葉を口にしなかったのは、先生の“医者”として……同じ“女”として、“母”としての優しさ。


そんな優しさをくれる先生に、あたしは何を聞こうとしているんだろう。


あたしだってバカじゃない。

先生の言葉が意味することくらい理解できる。


だけど……


「明日、もしまた赤ちゃんの心音が確認できなかったら……」


続きの言葉はもう、あたしの耳には届かなかった。


明日も聞こえなかったら……?


なんて、そんなこと考えられない。

考えたくない……。


──────……
────…

気がついた時、あたしはマンションの寝室にいた。

あの後、どうやって家に帰ったのかさえ覚えていなくて……


ただ1つ、ハッキリ分かるのは、大切な赤ちゃんの命の輝きが……失われかけているということ。


先生の言葉を思い出すだけで、胸がギューッと締めつけられるように苦しい。

お腹を守るように、包み込むように抱き締めて、ゆっくりと赤ちゃんに語りかけた。


「どうしたの?美姫、寝てるの?」


その瞬間、涙がツーッと頬を伝う。