「ってのが、カッコ悪いオレの本音」
「……え?」
急に身体を離されたことに驚いて顔を上げると、とても優しく微笑む悠河と目があった。
そして、さっきまで肩と腰に回されていた温かい彼の手は、いつの間にかあたしの顔をそっと包み込んでいる。
柔らかくも力強いその眼差しから、目が逸らせない。
ポーッと吸い込まれるように見つめていると、クスリと悠河が笑って言った。
「ここからはカッコいいオレな?」
「え……」
「これから先、佐倉のことでオレに『悪い』とか思うな」
「……どういうこと?」
「堂々としてろ。謝らなきゃいけないことは何もしていない。そうだろ?」
「…う…ん……」
「それに、佐倉のおかげでお前は本気で人を好きになることを止めた。……オレに出逢うまで」
「悠河……」
「佐倉との恋は、オレと出逢うために必要な時間だったんだ」
涙が込み上げてくる。
悲しいからじゃない。
とても幸せだから。
「『恋を止めていた甲斐があった』、いつかそう思ってほしい……お前に」
「……ッ」
「泣くな」
「だ…って……」
「そう思ってもらえる日が来たら、むしろ佐倉に感謝したいよ、オレは」
あたしは迷わず悠河の胸に飛び込んだ。
泣けてくる……
涙が止まらない。

