旦那様は社長 *②巻*


「ってのが、カッコ悪いオレの本音」

「……え?」


急に身体を離されたことに驚いて顔を上げると、とても優しく微笑む悠河と目があった。


そして、さっきまで肩と腰に回されていた温かい彼の手は、いつの間にかあたしの顔をそっと包み込んでいる。

柔らかくも力強いその眼差しから、目が逸らせない。


ポーッと吸い込まれるように見つめていると、クスリと悠河が笑って言った。


「ここからはカッコいいオレな?」

「え……」


「これから先、佐倉のことでオレに『悪い』とか思うな」


「……どういうこと?」


「堂々としてろ。謝らなきゃいけないことは何もしていない。そうだろ?」


「…う…ん……」


「それに、佐倉のおかげでお前は本気で人を好きになることを止めた。……オレに出逢うまで」


「悠河……」


「佐倉との恋は、オレと出逢うために必要な時間だったんだ」


涙が込み上げてくる。

悲しいからじゃない。

とても幸せだから。


「『恋を止めていた甲斐があった』、いつかそう思ってほしい……お前に」


「……ッ」

「泣くな」

「だ…って……」


「そう思ってもらえる日が来たら、むしろ佐倉に感謝したいよ、オレは」


あたしは迷わず悠河の胸に飛び込んだ。

泣けてくる……

涙が止まらない。