旦那様は社長 *②巻*


「え……」

「何だよ」

「だって、妬いて……?」

「悪いか」


少し恥ずかしそうに顔を赤らめた悠河が見えたけれど、すぐ胸に頭を押し付けられて見えなくなった。


どうしても顔が見たくて抵抗しようとすると、頭上から少し震えたような声が響いてきた。


「お前が、ただの男好きならよかったのに」


「悠河?」


「お前が、愛なんか知らない女ならよかったのに」


「……」


「お前が、もっと早く生まれていればよかったのに」


悠河の熱い吐息を頭に感じながら、切ない気持ちでいっぱいになった。


過去も今も未来も、全部自分一色に染めてしまいたい。

そう思えるのは、それだけ愛している証。


切ない心の中にポッと、まるで蛍のように暖かい小さな光が灯ったのを感じた。


「ごめんね、悠河。……ごめんなさい」


今のあたしには、こうして悠河の背中を包み込むことしかできそうもない。

小さな腕をいっぱいに広げて。

だけど、悠河を想う大きな心で。


好きだよ。

大好きだよ。


心の中で何度も繰り返されるこの言葉が、悠河の心にも伝わってほしい──…