旦那様は社長 *②巻*


「愛していたんだな、本気で」

「え?」

「佐倉のこと」


そう言った悠河は微笑みを浮かべているのに、声はとても切なく響いた。

応えに迷う。

もちろん本気だったから。


悠河はどう応えてほしいのか分からない。

もしかしたら、否定してほしいと思っているかもしれない。


それなのに……
あたしは本当に救いようのないバカだ。


「本気だったよ。他の誰も男に見えないくらい……愛してた」


優しいウソがつけなかった。

悠河をもっと傷つけるかもしれないのに、気のきいたウソ1つつけなかった。


だけど、過去の自分を否定しないでちゃんと認めてあげたい。

恥じるような恋はしていないから。

自分を誇れる恋だったから。


この場凌ぎでウソをつくことの方が、余計に悠河を傷つけてしまう気がした。


『全部受け止める』と言ってくれた悠河の覚悟を、裏切っちゃいけない、そう思った。



「幻滅…した…?」


不安は拭い去れなくて、声が震える。


悠河は、俯いたあたしの顔をゆっくりと持ち上げながら言った。


「惚れ直した」

「……え?」


「いつだって一生懸命に人を愛してきた光姫を、誇りに思う」

「悠…河……ッ」


溢れる涙を丁寧に拭ってくれる悠河の手を、そっと頬に導いてすがった。


「おかげで……今、かなり妬いてるけどな」