「愛していたんだな、本気で」
「え?」
「佐倉のこと」
そう言った悠河は微笑みを浮かべているのに、声はとても切なく響いた。
応えに迷う。
もちろん本気だったから。
悠河はどう応えてほしいのか分からない。
もしかしたら、否定してほしいと思っているかもしれない。
それなのに……
あたしは本当に救いようのないバカだ。
「本気だったよ。他の誰も男に見えないくらい……愛してた」
優しいウソがつけなかった。
悠河をもっと傷つけるかもしれないのに、気のきいたウソ1つつけなかった。
だけど、過去の自分を否定しないでちゃんと認めてあげたい。
恥じるような恋はしていないから。
自分を誇れる恋だったから。
この場凌ぎでウソをつくことの方が、余計に悠河を傷つけてしまう気がした。
『全部受け止める』と言ってくれた悠河の覚悟を、裏切っちゃいけない、そう思った。
「幻滅…した…?」
不安は拭い去れなくて、声が震える。
悠河は、俯いたあたしの顔をゆっくりと持ち上げながら言った。
「惚れ直した」
「……え?」
「いつだって一生懸命に人を愛してきた光姫を、誇りに思う」
「悠…河……ッ」
溢れる涙を丁寧に拭ってくれる悠河の手を、そっと頬に導いてすがった。
「おかげで……今、かなり妬いてるけどな」

