旦那様は社長 *②巻*


「悠河……」


初めて男の人の涙をキレイだと思った。

不謹慎かもしれないけど。


それはあたしのためだけの涙だから。

悠河の想いが溢れだしたものだから。


誰もが憧れを抱くこの人に、こんなに愛してもらえているなんて、とても光栄で幸せなこと。


それなのにあたしは、そんな彼をずっと不安にさせていたなんて……。


一体どんなやりきれない思いを抱えてきたんだろう?

会社で、あたしと敬吾をどんな気持ちで見つめていたんだろう?


それがもしもあたしの立場になっていたら……

悠河と昔の恋人の姿を毎日目の前で見せつけられていたら……


そう思うと、胸がズキズキと痛む。

あたしはなんて自分勝手な女だったんだろうと。


「ごめんね……。悠河、ごめんなさい」


もっとちゃんと伝えたいのに、『ごめん』なんてたった3文字の言葉でくくりたくないのに……。

他に言葉が見つからない。


今すぐキスできる距離にある悠河の顔。

本当は今すぐにキスして伝えたい、あたしの気持ち。


だけど今すべきことは、きっとそうじゃない。

今すべきなのは、悠河に真実を伝えること。


全部話して、悠河にあたしの気持ちが伝わったら……あたしからキスするから。