旦那様は社長 *②巻*


どれだけ悩ませてしまっていたんだろう。

オレのくだらない嫉妬のせいで。


「ごめんな」


散々振り回しておきながら、この一言しか言えなかった。

だけど、今は言葉よりも全身で伝えたい。


「光姫……ごめん」


何度も「光姫」と囁きながら、キスを繰り返した。

丁寧に、頭のてっぺんから手の甲まで。

それなのにどうしても唇にはできなくて、そのことが光姫を不安にさせた。


「どうしてちゃんとキスしてくれないの?」


「それは……」

「まだ怒っているの?」

「怒ってない」

「ウソッ!!怒ってるんでしょ!?だからちゃんとキス……してくれないんでしょ?」


「そうじゃない」

「あたし、不安だったんだから……。すごく悲しかったんだから……ッ」


今さら後悔したって遅いけど、光姫を苦しめてしまった自分を殴りたい。


大きな目を真っ赤にして「バカ」と言い続ける光姫を、オレは抱きしめることしかできなかった。


「ごめん」

「バカ。悠河の大バカッ!!」

「うん」


どんなにバカと言われても、腕の中の光姫がとても愛おしく思えるから不思議だ。

光姫の「バカ」が、「スキ」に聞こえてしまう。


「光姫……」


オレの中も、ある感情で溢れだしそうだった。

それはきっと、今オレが一番に伝えなきゃいけない想い。


光姫の涙に濡れた顔を両手でゆっくりと包み込み、優しく持ち上げて言った。



「愛してる」

「……え?」




「愛してるよ。世界中の誰よりも」