うそ……
最近ろくに口も聞いていない悠河が……こんな公の場で嫉妬?
自分の目を疑わずにはいられない。
「はは。すみません。やっぱり同族でしたか」
「ええ。ヤキモチやく天才ですから、うちの社長は」
一條社長と藤堂さんの会話が耳に入る度、身体がどんどん熱くなる。
いつものように、悠河が否定してくれることを期待したのに…。
見上げた悠河の顔も、あたしに負けないくらい赤かった。
「え…」
「見るな」
「顔…」
「黙れ」
恥ずかしそうに顔を背けて腕組みした悠河を、思わず抱き締めたくなった。
抱き締めたい……
今すぐに……
こんな感覚を持ったのはいつぶりだろう。
すっかり忘れかけていた、この感じ。
そうだ……
あたしたちは少し前まで、これが生活の中に当たり前にあったのに。
やっぱり、こんな2人がいい。
こんな2人に戻りたい。
「悠河」と言いかけた時、またも一條社長に先を越された。
「有栖川社長は、奥様のどんなところがお好きですか?」

