「あっ、美海!!」
急に大声を出した一條社長に少し驚いて、その視線の先を目で追うと。
「ごめんなさい。すっかり遅くなってしまって」
ヒールの音をコツコツ鳴らせながら、今一番会いたかった人が走ってくる姿。
やばい…。
めちゃくちゃ美人。
一條社長もそうだけど、この夫妻、普通の人とは違うオーラを感じる。
現役モデルをしているという美海さんは、とても同い年には見えない。
もっと若く見えるのに、だけどものすごく“女”を感じる。
そっと悠河の顔を見上げると、瞬きもせず美海さんを凝視していた。
ケンカしているのに、悔しいけどやっぱり、他の女性を見てほしくないと思ってしまう複雑な女心。
そんなあたしの視線に気づいたのか、悠河がチラッと横目にあたしを見た。
「……っ!?」
あたしには聞こえた。
悠河の心の声が。
『負けたな』って、ぜったいに今思った!!
自然と拳に力が入る。
そんなあたしをフォローしたかったのかどうなのか、藤堂さんがコソッと余計な一言を口にした。
「しかたないよ。モデルだから」

