旦那様は社長 *②巻*


「あっ、美海!!」


急に大声を出した一條社長に少し驚いて、その視線の先を目で追うと。


「ごめんなさい。すっかり遅くなってしまって」


ヒールの音をコツコツ鳴らせながら、今一番会いたかった人が走ってくる姿。


やばい…。

めちゃくちゃ美人。

一條社長もそうだけど、この夫妻、普通の人とは違うオーラを感じる。

現役モデルをしているという美海さんは、とても同い年には見えない。

もっと若く見えるのに、だけどものすごく“女”を感じる。


そっと悠河の顔を見上げると、瞬きもせず美海さんを凝視していた。

ケンカしているのに、悔しいけどやっぱり、他の女性を見てほしくないと思ってしまう複雑な女心。


そんなあたしの視線に気づいたのか、悠河がチラッと横目にあたしを見た。


「……っ!?」


あたしには聞こえた。

悠河の心の声が。


『負けたな』って、ぜったいに今思った!!


自然と拳に力が入る。

そんなあたしをフォローしたかったのかどうなのか、藤堂さんがコソッと余計な一言を口にした。


「しかたないよ。モデルだから」