「ステキです」
「え?」
「そんな風に言ってもらえる奥様は、すごく幸せだと思います」
「…だといいんですけど」
「いつどんな時も“ただの男”にさせてしまうくらい、ステキな奥様なんですね」
一條社長は幸せそうに微笑みながら、コクンと頷いた。
これが仕事の席だからとか、そんな理由で夫婦円満を演じているわけじゃない。
本当に心の底から奥様を愛しているから、こんな優しい笑顔ができるんだ。
なんだか、少し妬けた。
悠河は、仕事の席になると必ず外の顔になってしまう。
そんな悠河を尊敬し、頼もしくも思っていたけれど、今日一條社長に会って思った。
仕事の仮面を脱ぎ捨てたくなるくらい、あたしに夢中になってほしい…って。
愛の量は計れないけど、ましてや他人と比べるなんてもっと意味がないけど、一條社長が奥様を想う気持ちに、今のあたしは到底及ばない。
それに……
あたしたちの関係は、今一番最悪な時。
ここ最近、一條社長のように“愛されてる”と実感できるようなことは、何もーー…

