旦那様は社長 *②巻*


声を聞いただけで、もうこの人の機嫌レベルまで分かるようになってしまった。

それくらい最近、いろんなこの人を見るから。


「おい、悠河。どこが遅いんだよ?まだ15分前じゃないか」


「お前は黙ってろ。社長夫人なんだから、30分前が当たり前だ」


昨日に引き続き、悠河は機嫌がよくないらしい。

本当は今日会ったら一番に聞いてみたかった言葉を、グッと呑み込んだ。

『昨日はどこに行ってたのよ!!』

って言葉を。


たぶんきっとあたしじゃなくても、この状況に遭遇してしまったら、全ての奥様が同じ台詞を口にすると思う。

だけどここはヨソサマのパーティー会場。


「ごめんなさい。次から気をつけます」


続きは家に帰ってから…。


「光姫」


「…何?」


「私情をココに持ち込むなよ?今日はいつも通りの夫婦でいろ」


私情を持ち込むな?

それはあたしが、今の悠河に言いたい言葉だ。


「いつも通りって…険悪な夫婦…ってこと?」


少し顔を上げると、悠河の眉がピクッと動いたのが見えた。


「お、おいおいお前ら……」


ただ1人、藤堂さんだけが周囲を気にしながらオロオロしている。