声を聞いただけで、もうこの人の機嫌レベルまで分かるようになってしまった。
それくらい最近、いろんなこの人を見るから。
「おい、悠河。どこが遅いんだよ?まだ15分前じゃないか」
「お前は黙ってろ。社長夫人なんだから、30分前が当たり前だ」
昨日に引き続き、悠河は機嫌がよくないらしい。
本当は今日会ったら一番に聞いてみたかった言葉を、グッと呑み込んだ。
『昨日はどこに行ってたのよ!!』
って言葉を。
たぶんきっとあたしじゃなくても、この状況に遭遇してしまったら、全ての奥様が同じ台詞を口にすると思う。
だけどここはヨソサマのパーティー会場。
「ごめんなさい。次から気をつけます」
続きは家に帰ってから…。
「光姫」
「…何?」
「私情をココに持ち込むなよ?今日はいつも通りの夫婦でいろ」
私情を持ち込むな?
それはあたしが、今の悠河に言いたい言葉だ。
「いつも通りって…険悪な夫婦…ってこと?」
少し顔を上げると、悠河の眉がピクッと動いたのが見えた。
「お、おいおいお前ら……」
ただ1人、藤堂さんだけが周囲を気にしながらオロオロしている。

