旦那様は社長 *②巻*


「一條夫妻の写真は見た?」


「はい。大丈夫、ちゃんと顔は頭に入ってます」


「そっか。じゃあ、後は楽しんで!!」


「えっ!?」


この状況をどう楽しめと言うのか、藤堂さんの真意が分からない。

だって今日は…仕事でしょう?


「一條夫妻に会えば分かるよ。奥様は、光姫ちゃんと同い年だから」


「そうなんですか!?」


そういう重要な情報は、もっと早く教えてほしかった。

そうすれば、少しはこの緊張も解れたのに…。

少し恨めしそうに藤堂さんを見上げると、ぶはっと突然吹き出した。


「あーごめんごめん!すっかり言うの忘れちゃって」


「もうーお願いしますよー…」


膨れっ面のまま文句を言いながら会場に一歩足を踏み入れると。


「遅かったじゃないか」


背後からズッシリと重く、明らかにいつもより低い声が聞こえた。