旦那様は社長 *②巻*


会場に着くと、その規模の大きさに言葉を失った。

それが一條財閥の権力の大きさを表しているような気がして、急に緊張が襲ってくる。

思わず両手の拳に力が入った。


「大丈夫だよ、光姫ちゃん」


「え?」


あたしの心境なんて全てお見通しの藤堂さんには敵わない。

藤堂さんは、いつもこうして公私に渡って、あたしをリラックスさせてくれる言葉を言ってくれる。

それも、『ここしかない!』という絶妙なタイミングで。


「有栖川家の結婚披露宴よりもギャラリー少ないから」


「藤堂さん…」


「平均年齢だって、今日のが低いよ?」


いつものように軽やかにおチャラけて、あたしの緊張を解してくれようとする優しさに、自然と笑みがこぼれた。


「好きになっちゃいそうです」


「え?マジ!?もしかしてこれ…略奪愛!?」


「まいったなぁ。やっぱモテんなーオレ」なんて照れたように見せる藤堂さんを見て、少しだけ心が温かくなった。


どうして藤堂さんが副社長なのか、分かる気がする。

仕事ができるとか、もちろん大切なことだけど。

それ以上に大切な、“人の心を動かすことができる人”

それが、藤堂さんだったんだ。