会場に着くと、その規模の大きさに言葉を失った。
それが一條財閥の権力の大きさを表しているような気がして、急に緊張が襲ってくる。
思わず両手の拳に力が入った。
「大丈夫だよ、光姫ちゃん」
「え?」
あたしの心境なんて全てお見通しの藤堂さんには敵わない。
藤堂さんは、いつもこうして公私に渡って、あたしをリラックスさせてくれる言葉を言ってくれる。
それも、『ここしかない!』という絶妙なタイミングで。
「有栖川家の結婚披露宴よりもギャラリー少ないから」
「藤堂さん…」
「平均年齢だって、今日のが低いよ?」
いつものように軽やかにおチャラけて、あたしの緊張を解してくれようとする優しさに、自然と笑みがこぼれた。
「好きになっちゃいそうです」
「え?マジ!?もしかしてこれ…略奪愛!?」
「まいったなぁ。やっぱモテんなーオレ」なんて照れたように見せる藤堂さんを見て、少しだけ心が温かくなった。
どうして藤堂さんが副社長なのか、分かる気がする。
仕事ができるとか、もちろん大切なことだけど。
それ以上に大切な、“人の心を動かすことができる人”
それが、藤堂さんだったんだ。

