「光姫ちゃんだけ」
「藤堂さん……」
「抱いた女の数が男の価値を上げるんだとか言ってたくせに、今何て言ってると思う?」
「……何て言ってるんですか?」
「惚れた女をどれだけ笑顔にさせられるか」
それを聞いた瞬間、涙がジワッと目に溜まってきた。
「まさかアイツの口からそんなセリフ聞けるなんて思わなかったから驚いたけどね」
さっき社長室を飛び出した時とは、意味も内容も違う涙がとうとう溢れ出してしまった。
「光姫ちゃんがアイツを変えたんだよ」
「違います。変えてくれたのは……悠河なんです」
嫉妬したり離れることを寂しく思ったり、『愛してる』なんてセリフをもう一度口にできる日が来たのは、全部悠河のおかげだから。
「ったく。ホント似た者同士の夫婦だな」
「え?」
「いいのいいの。こっちの話だから」
クックッと笑いながら、藤堂さんがゆっくり近づいてくる。
「光姫の涙を拭いてやれるのもオレだけ」
「……藤堂さん?」

