「オレさ、今まで悠河のことなら何でも知ってるって思ってたんだ」


「事実、知ってるんですよね？」


「まーだいたいはね。だけど久々にアイツに会って、オレの知らない悠河をいっぱい見たよ」


そう言った藤堂さんは、なぜかすごく嬉しそうだった。


「光姫ちゃんといる時のアイツ、顔緩みっぱなしじゃん」


「……そうですか？」


「オレが光姫ちゃんに話しかけただけですっげー威圧してくるし。人前であんなベタベタしたり」


人の目にそう映っているんだと改めて言葉で並べられると、何だかもの凄く恥ずかしい。


視線を逸らしたものの、含み笑いの声から目の前でニヤついている藤堂さんを簡単に想像できた。


「常に光姫ちゃんを目の届くとこに置いときたいんだよな、あのバカ」


「え？」


「あそこまで女に必死な悠河なんて初めて見た」


「初めて…ですか…？」


悠河が昔たくさん遊んでたことは知ってる。

だけど“彼女”になった人には、あたしと同じ愛し方をしていたのかと思ってた。


……それを嫉妬したことだってある。

過去も未来も、全部あたしにすり替えられたらって思ったこともある。

どうにもならないことだって分かっていても。


「光姫ちゃんだけだよ。アイツの感情をあんなにかき乱せるのは」