「ただの同僚ねぇ……。まぁ今はその話がしたいわけじゃないからいいや」
「……社長に何か言われたんですか?」
「ん?あー…違うよ。アイツは意地っ張りだからオレに光姫ちゃんのこと頼んだりしないって」
ナイナイと、手を振りながら笑う藤堂さんに少しだけ妬けた。
「本当に社長のこと何でもご存知なんですね、藤堂さん」
あたしには分からない。
悠河がどうしてこんなに機嫌が悪いのか。
何を思っているのか。
それに比べて藤堂さんは、いつも悠河の考えてることが分かってるみたい……。
「そんな顔しないでよ。確かにオレは光姫ちゃんよりもアイツとの付き合いは長いからさ。『あうんの呼吸』っつーの?」
「……」
「きっと光姫ちゃんが知らない悠河もたくさん知ってると思うよ」
「そう…ですよね……」
悠河と結婚して数ヶ月。
それはあたしと悠河2人の歴史の長さでもある。
藤堂さんと悠河の関係に比べたら到底かないっこなくて。
あたしの知らない悠河がいるのは当たり前のこと。
それにあたしにだって、悠河の知らない過去がある。
ーー…敬吾のことも。
それなのに悠河のことは全部知りつくしたいなんて、身勝手すぎるよね。
胸の中のモヤモヤした気持ちをグッと押し込めた。
「だけどさ、オレの知らない悠河を光姫ちゃんもたくさん知ってるよ?」
「え?」

