「捨てるわけないじゃない……」
「え?」
「どっちみち結果は同じだったよ」という敬吾の言葉だけは聞き流せなかった。
もしかしたら冗談で言ったつもりなのかもしれないけど。
それはあたしの敬吾への気持ちを、敬吾自身が否定したことになる。
それだけは……
聞き流せないよ、敬吾。
「廃人になっても、きっと敬吾を想い続けたよ。だって……
愛してたもん、敬吾のこと。……愛してたもん」
会社が倒産したからって、社員全員の転職先を見つけるなんて……そんな義務はどこにもない。
それなのに一生懸命、社員一人一人のために行動し続けた敬吾を、嫌いになる要素がどこにあるの?
むしろ尊敬するよ。
きっとあたし、惚れ直してたと思う。
「どこまでもついていったよ、あたしは……」
自然と涙が溢れ出して、視界が滲んだ。
しばらく黙ってあたしを見つめていた敬吾は、ギュッと固く目を閉じて、微かに聞こえるくらいの声で話し始めた。
「……分かってたよ、それくらい。だから……オレは……」
敬吾の声が……
震えていた。

