旦那様は社長 *②巻*


もちろん、敬吾だって今だから笑えるんだと思う。

失踪前の数日間は、本当に“心ここにあらず”という感じで、いつも遠くを見ていた敬吾。

きっとあの時、1人で苦しんでいたんだ。


それなのにあたしは……結婚に浮かれてハイになって……大切な人の異変にまったく気づかなかったなんてーーー…


今更悔やんでも、過ぎたことはどうにもできない。

だけど、ずっと敬吾に“裏切られた”“捨てられた”なんて思っていたあたしはバカだ。

そんなこと思う資格なんてない。

単なる被害妄想……


「あたしがあの時……ちゃんと敬吾の異変に気づいていれば……」


「光姫は何も悪くない。何も相談せずオレの一存で決めたことだ」


「でもっ」


「これでよかったんだ。あの後、本当に地獄のような毎日だった。寝る時間さえなくて。

……借金だけじゃない。全従業員の転職先も見つけなきゃいけなかったしな。まるで廃人のようだった、あの時」


「……」


「あの時のオレ見たら、光姫に幻滅されて捨てられてたよ、きっと」