「あの時お前を傷つけた過去はもう変えられないけど。何でオレがお前の元から消えたのか、その理由を知る権利はお前にあるはずだから。
……だから、マジックの種明かしみたいな感覚で聞いてよ」
「はは」っと軽く笑う敬吾を、あたしは一喝した。
「ふざけるなら聞かない」
「……ごめん」
ばつが悪そうに頭を掻くと、敬吾は少し俯いた。
その間もあたしは、ただ真っ直ぐ敬吾を見つめて言葉を待つ。
しばらく続く沈黙に耐えきれなくなって口を開きかけると、敬吾の唇がゆっくり動き始めた。
「どこから話せばいいのかな……」
「全部」
「え?」
「全部話して。敬吾の素性も、あたしに隠してた理由も全部」
あたしが知りたいのは、まだ付き合ってた時、敬吾に関して知らされていた情報がどこまで本当だったのかということ。

