旦那様は社長 *②巻*


他愛もない話をしばらく続けていると、パスタ料理が運ばれて来た。


それを見た瞬間、ある昔の記憶が蘇って思わず敬吾の手元に視線を移す。


「ぷっ」


「え?何?」


突然吹き出したあたしを不思議そうに見ながら、敬吾は首を捻った。


「だってそれ。ぜんぜん変わってないから」


あたしの視線の先には、必要以上にフォークをクルクルさせながらパスタを巻き付けている姿。


あの頃と変わらない敬吾のクセ。


「もう全部巻きついてるじゃん。それ以上クルクルさせる理由って何?」


笑いが堪えられなくて、思い切り笑った。


「うっせ。いんだよ、落ち着くんだから」


顔をちょっと赤らめながら、わざとらしくクルクルさせる敬吾に安心してる自分がいる。


昔からパスタを食べる時は、いつもこんな会話が繰り広げられていた。


本当にあの頃に戻ったような気になってしまう。ただ懐かしい……そんな感じ。


「よかった。初めてオレに笑ってくれた」