「……で?話って何?」
レストランで席に着くと同時に口を開くと、呆れたように敬吾が笑う。
「いきなりかよ」
「だって。時間ないのよ、分かってるでしょ?」
社長が戻ってくる前に、あたしはあのマンションに帰らなきゃいけない。
だから今日は、敬吾の話だけを聞いて早めに立ち去るつもりでいた。
「少しは再会を懐かしみたいけどね?オレは」
「あなたとはいい思い出なんてなかったと思うけど?」
皮肉たっぷりに尋ねるあたしに、敬吾は苦笑するしかなかった。
「えらく嫌われたもんだ……まあ、仕方ないか」
またあの表情ーー…
どこか傷ついたような。
どうして敬吾がそんな顔するの?
予めコース料理を頼んでいたらしく、食前酒と前菜が運ばれてきた。
あたしの食前酒は、ノンアルコールのものに変えられていたけど。
「じゃあ、オレたちの再会に」
グラスを持ち上げる敬吾に向かって、「あたしの幸せに」と言い直しながら、グラスを合わせた。

