“結婚しよう”
そう言われた時、本当に嬉しかったのにーー…
敬吾はあのプロポーズ、どんな気持ちであたしに言ったの?
心からの気持ち?
それとも、その場の雰囲気に流されただけの軽い気持ち?
……ねぇ、教えてよ。
あたしは必死に敬吾の影を追った。
ただ真実が知りたくて。
でもーーー…
その日を境に、敬吾は完全にあたしの前から姿を消した。
携帯も解約して。
マンションは既に引き払った後で。
だからあたしは、会社に電話をかけた。
もう、それしか敬吾にもう一度会う方法がないと思ったから。
でも……
《佐倉敬吾……という人物は、我が社に在籍していないようですが……》
待っていたのは、またしてもあたしを奈落の底に突き落とすような……残酷な真実だった。
『会社も……嘘?』
これで完全に手掛かりの糸が、プツンと途切れた。
一体、何が本当で何が嘘なの?
あたしへの愛は……嘘?
…ーー何より、あたしが愛した“佐倉敬吾”という人物は存在するの?
『分かんない……分かんないよ……敬吾ぉ!!』

