変わってないーーー……
あの日から全く。
あの時の……
あたしの大好きだった
“敬吾”のまま。
《敬吾……》
あたしの元婚約者で
……結婚式直前にあたしを捨てた男。
それも……失踪という最悪の形で。
蘇る……あの日の記憶。
ーーーーーーー……
ーーーーー……
『ねぇ、敬吾!見て見て?ジャーンッ、婚姻届だよ!!結婚式が終わったら、そのまま提出しに行くんでしょ?』
結婚式を間近に控えていたあの日。
あたしは敬吾に頼まれて、婚姻届をもらいに行ってきていた。
結婚式が終わったら、その足で婚姻届を提出しに行こうーーー…
それは敬吾が言い出したことだった。
『ああ……ありがとう』
……今思えば、あの日の敬吾は既に様子がおかしかったのに。
結婚に浮かれていたあたしは、全く敬吾の異変に気づかなかった。
前日まではあたしと一緒に……ううん、あたし以上に結婚話を楽しそうにしていた敬吾が……
あの日、口にした言葉は
……それだけだった。

