「あの、今その人はどちらに?」


2人の会話に割って入る形で藤堂さんに聞いてみると。


「たぶんどっかの会議室に待たされてるから、今呼ぶよ」

と言いながら、胸ポケットから携帯を取り出し、電話をかけ始めた。


「あいつのことだ、たぶんすげぇ美人だぞ」


社長がジトッとした目つきで藤堂さんを見つめる。


「美人か……」


この言葉に消して深い意味はなかった……はずなのに。


「なんだよ、ヤキモチか?心配しなくてもオレはお前しか見てないって」


完全に解釈を誤った社長が、満面の笑みであたしの顔を覗き込みーー…

「チュッ」

わざといつもより大きな音を立ててキスをしてきた。

「んなっ!?」

文句を言おうと口を開いたと同時に

「お前らなぁ……人前では弁えろよ」

電話を終えた藤堂さんが、呆れ顔であたしたちに諭した。


……って、あたしは悪くない、絶対に。


ジロッと社長を睨みつけると。


ーーコンコン


部屋のノック音が響いた。

「おっ、来たな、入っていいぞ~」


一体どんな美人かと期待を膨らませながら、あたしは全神経を入り口に集中させる。


「失礼します」と、耳に入ってきた声は……男?


ーーガチャッ


そして……

ゆっくりと開かれた扉の先に立っていたのは……




「……っーー!?」