旦那様は社長 *②巻*


藤堂さんは、チラッと一瞬社長に視線を移しながら、少し口角を上げた。


「悠河に頼まれたんだよね、光姫ちゃんを監視してくれって」


「……監視?」


今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのは気のせいだろうか。


「おい……それじゃ意味が違ってくんだろうが」


社長があたしの横で溜め息混じりに呟く。


「へいへい。ったく、最初から自分で言やぁいいだろうが。

……ああ……つまり、オレは光姫ちゃんの影武者ってことだよ」


「影武者?」


「そう。光姫ちゃんの悪阻がひどい時や体調が優れない時は、体を第一優先にしてほしいんだって。

……つまりオレは、光姫ちゃんの世話係兼、影武者ってわけ」


分かった?とでも言うように、首を傾ける藤堂さんに

「……分かりません」

と答えると、藤堂さんはまるで芸人のように、ガクッと肩を落としてしまった。


意味が分からなくて、思わず社長の顔を見ると。


「慎也には言ってある、お前の妊娠のこと。オレは会議ばかりでいつもお前を見ていられないから。

……だからコイツに頼んだんだ。光姫をサポートしてやってくれって」


社長は藤堂さんを指差しながら、更にこう続けた。