藤堂さんは、チラッと一瞬社長に視線を移しながら、少し口角を上げた。
「悠河に頼まれたんだよね、光姫ちゃんを監視してくれって」
「……監視?」
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのは気のせいだろうか。
「おい……それじゃ意味が違ってくんだろうが」
社長があたしの横で溜め息混じりに呟く。
「へいへい。ったく、最初から自分で言やぁいいだろうが。
……ああ……つまり、オレは光姫ちゃんの影武者ってことだよ」
「影武者?」
「そう。光姫ちゃんの悪阻がひどい時や体調が優れない時は、体を第一優先にしてほしいんだって。
……つまりオレは、光姫ちゃんの世話係兼、影武者ってわけ」
分かった?とでも言うように、首を傾ける藤堂さんに
「……分かりません」
と答えると、藤堂さんはまるで芸人のように、ガクッと肩を落としてしまった。
意味が分からなくて、思わず社長の顔を見ると。
「慎也には言ってある、お前の妊娠のこと。オレは会議ばかりでいつもお前を見ていられないから。
……だからコイツに頼んだんだ。光姫をサポートしてやってくれって」
社長は藤堂さんを指差しながら、更にこう続けた。

