腰に廻された社長の腕をサッと払いのけ、あたしは無言で朝ご飯の支度を始めた。
ーートントントントン♪
包丁とまな板の音がキッチンに鳴り響く。
やっといつもの朝の風景に戻ったように見えた。
ただ、1つだけ違うことが。それは……
「邪魔なんだけど」
いつもはいないはずの社長が、後からあたしを抱きしめていること。
これじゃあ、キビキビ動けない。
「光姫が心配で……」
「……胸じゃなくて?」
まだ懲りずにあたしの胸をしっかり掴んでる社長の手。
「まぁまぁ、怒んなよ」
そう言うと、チュッとあたしの頭にキスをしてきた。
いい加減、怒る気が失せてあたしも無視を決め込む。
「楽しみだな……女かな?男かな?」
「……ズルイ」
急に優しい声で、ポツリと呟く社長。
「あたし、怒ってんのに」
そんな声で、そんなこと言われたら……無視できない。

