「いつまでも隠し通せない……お腹が目立ち始めたらさすがに無理だ。だから、安定期に入るまで……」


申し訳なさそうにあたしを見下ろす瞳が、少し揺れた。


ありがと、社長。
……それで十分だよ。


「ごめんね」


ありがとうって言いたかったのに、口をついて出たのは謝罪の言葉。


社長の沈んだ顔を見たら、「ごめんね」しか言えなかった。


「いや、オレの方こそ……お前が感じてるプレッシャーに気づいてやれなくて……ごめん」


そう言うと社長は、優しくあたしの腰に腕を廻した。


「ねぇ、気づいたんだけど、さっきからあたしたち謝ってばかりだよ?」


「……確かに」


「悠河が謝るなんて、やっぱ変だよ。俺様社長らしくない」


「はあ?いつ俺様だったんだよ。どっちかっつーと、オレはお前に尻に敷かれてんだろ」


「ちょっと!あたしがワガママだって言いたいの?!」


「ほら見ろ、すっげぇ睨み。恐妻だな、お前」


ニヤリと笑いながらあたしを挑発する社長。


“恐妻”なんて暴言吐かれて、内心イラッとしながらも。


社長とこうやってケンカするのも久々で、どこか嬉しい自分もいた。


妊娠が分かってから少しずつ、あたしと社長の間の溝も埋まってきている……そう実感し始めていた。