気がつくと、無意識のうちに社長の服を掴んでた。


「待って」


「……光姫?」


「言わないで、会長にはまだ……」


本当は、一番に報告すべき相手だと思う。


義務みたいでイヤだったけど……しきたり、ちゃんと守ったでしょう?これで満足?


って言ってやりたい。


……これで有栖川の人間になれたんだってこと、ちゃんと認めてもらいたい。


でもーーー……


「佐伯先生も言ってたじゃない?今が一番大事な時だって」


「ああ……」


「だから、会長にはまだ黙っててほしいの」


不安な気持ちを隠したくて、そのまま社長の胸に顔を埋めた。


すると会長のあの別人のような顔が、突然脳裏に浮かんで……ギュッときつく目を閉じる。


今のあたし、確実に会長に怯えてる。


「会長のプレッシャーが……今のあたしには一番キツイ……」