旦那様は社長 *②巻*


零れ落ちる涙を両手で拭いながら、あたしは再び社長に抱きついた。


「あたし…っ、ホントに不安だったの……悠河にとってあたしの存在って……一体何なんだろうって。だって悠河……何も言ってくれないから」


ずっとあたしの頭を優しく撫でてくれていた社長。


「悪かったよ。でもお前だって……オレに何も言ってくんねーのは、けっこう寂しかったりするんだけど?男としてもダメなのかって、けっこうへこんだ」


ふっと軽く一笑して、あたしの肩をしっかりと抱きしめる。


「これからは……隠し事なしだよ?」


ズズッと鼻をすすりながら、まるで色気の欠片もないあたし。


「汚ねーな。このスーツ、新しいんだけど?」


「うるさいなぁ。お金持ちのくせに」


「お前だってその一族だろ?」


「……まあね?」


お互いの体をしっかりと抱きしめ合ったまま、あたしたちは久々に……あたしたちらしい会話をして笑い合った。


やっぱり今の方が、あたしたちらしい。


こうやって何でも言い合える関係が、一番あたしたちらしい。


「なんか、落ち着くね?」


「……そうだな」


穏やかで温かくて優しい空気があたしたちを包み込んでいた。


この2人の空気を守りたい。


もうぜったいにあたしたち、お互いにウソはつかない。


だから……あたし、言わなきゃ。


「悠河?あたしね……隠してたことがあるの」