零れ落ちる涙を両手で拭いながら、あたしは再び社長に抱きついた。
「あたし…っ、ホントに不安だったの……悠河にとってあたしの存在って……一体何なんだろうって。だって悠河……何も言ってくれないから」
ずっとあたしの頭を優しく撫でてくれていた社長。
「悪かったよ。でもお前だって……オレに何も言ってくんねーのは、けっこう寂しかったりするんだけど?男としてもダメなのかって、けっこうへこんだ」
ふっと軽く一笑して、あたしの肩をしっかりと抱きしめる。
「これからは……隠し事なしだよ?」
ズズッと鼻をすすりながら、まるで色気の欠片もないあたし。
「汚ねーな。このスーツ、新しいんだけど?」
「うるさいなぁ。お金持ちのくせに」
「お前だってその一族だろ?」
「……まあね?」
お互いの体をしっかりと抱きしめ合ったまま、あたしたちは久々に……あたしたちらしい会話をして笑い合った。
やっぱり今の方が、あたしたちらしい。
こうやって何でも言い合える関係が、一番あたしたちらしい。
「なんか、落ち着くね?」
「……そうだな」
穏やかで温かくて優しい空気があたしたちを包み込んでいた。
この2人の空気を守りたい。
もうぜったいにあたしたち、お互いにウソはつかない。
だから……あたし、言わなきゃ。
「悠河?あたしね……隠してたことがあるの」

