「苦痛……?」
「そう。今だから言えるけど……本当に苦痛だったんだから。自分が満足するとサッサと寝ちゃってさ?その寝顔に何度殺意を覚えたか……」
あたしは握りこぶしを作りながら、大袈裟に手を震わせた。
「……悪かったよ」
「え?」
「何度も言わせんな!!悪かったっつってんだろ!!」
顔を真っ赤にしながらそれだけ言い終えると、社長はあたしから顔を背けてしまった。
そして両腕を前で組みながらーー…
「……仕方ねーだろ。お前の気持ちが分かんなかったから……ああやって無理矢理にでも抱いてる間は、お前……オレのこと考えるだろ?」
顔は見えないけど、耳だけは真っ赤にして。
あたしの知らなかった事実……社長の気持ちを教えてくれた。
「不安だったから……だからあんなに?」
もう一度確認すると、社長はただ黙って小さく頷く。
「……ぷっ、あはははははは」
その瞬間、あたしの中の何かがプッツリ切れて、笑いが止まらなくなった。
「おまっ……何笑ってんだよ?!こっちは真剣に……」
振り返った社長の顔が茹蛸みたいに真っ赤で、更にあたしの笑いを誘う。
だって……
「おかしいよ。あたしたち、お互いたくさん悩んでたのに……言葉にしたらこんなに簡単な話だったなんて……何やってたんだろ?ホントに…っ……」
「なんだよ、何で泣くんだよ?!」
さっきまで笑っていたはずのあたしの頬を、いつの間にか温かい雫が伝っていて。
それを見た社長が、今あたしの目の前で1人慌てふためいている。
「よかった……」

