自分の気持ちもはっきりとしないまま、夕食の後片付けを始めた。
その間、社長がお風呂に向かった音が聞こえたけど……いつもは必ずあたしに一声かけるのに、今日は無言のままリビングを通り過ぎていった。
「やっぱり……このままじゃよくないよね」
あの社長に、こんなにもあからさまに避けられると……胸がざわつく。
きっと最近のあたしの微妙な変化を、社長も心のどこかで“おかしい”と感じ始めてる。
妊娠疑惑がバレるのも、時間の問題かもしれない。
「今のうちに電話しよう」
まだ時間は20時少し前。
社長がお風呂に入っている間に佐伯先生に連絡を取ろうと、リビングのテーブルの上に置いた携帯電話をとろうとした。
その瞬間。
この前と同じ感覚に陥り、目の前が真っ暗にーー…
「…き……光姫……!!」
意識が朦朧としている中、社長があたしを呼ぶ声だけが耳にこだましていた。
そして……
次に目が覚めた時はーー……
この前と全く同じ、有栖川総合病院の広い個室に寝かされていた。
「光姫……大丈夫か?」
あたしの左手をしっかり握り締めながら、社長が不安そうな顔をしている。
「うん。もう大丈夫。……心配かけてごめんね?」
優しくニッコリ微笑みながら、久しぶりに社長に笑顔を見せた。
「お前……やっぱり何かあるのか?この前から倒れてばかりだろ……」
「倒れてばかりって……まだ2回だよ?」
笑って誤魔化そうとしたけど、今日の社長は引き下がらなかった。
「オレに何を隠してる?」

