旦那様は社長 *②巻*


自分の気持ちもはっきりとしないまま、夕食の後片付けを始めた。


その間、社長がお風呂に向かった音が聞こえたけど……いつもは必ずあたしに一声かけるのに、今日は無言のままリビングを通り過ぎていった。


「やっぱり……このままじゃよくないよね」


あの社長に、こんなにもあからさまに避けられると……胸がざわつく。


きっと最近のあたしの微妙な変化を、社長も心のどこかで“おかしい”と感じ始めてる。


妊娠疑惑がバレるのも、時間の問題かもしれない。


「今のうちに電話しよう」


まだ時間は20時少し前。


社長がお風呂に入っている間に佐伯先生に連絡を取ろうと、リビングのテーブルの上に置いた携帯電話をとろうとした。


その瞬間。


この前と同じ感覚に陥り、目の前が真っ暗にーー…


「…き……光姫……!!」


意識が朦朧としている中、社長があたしを呼ぶ声だけが耳にこだましていた。


そして……


次に目が覚めた時はーー……


この前と全く同じ、有栖川総合病院の広い個室に寝かされていた。


「光姫……大丈夫か?」


あたしの左手をしっかり握り締めながら、社長が不安そうな顔をしている。


「うん。もう大丈夫。……心配かけてごめんね?」


優しくニッコリ微笑みながら、久しぶりに社長に笑顔を見せた。


「お前……やっぱり何かあるのか?この前から倒れてばかりだろ……」


「倒れてばかりって……まだ2回だよ?」


笑って誤魔化そうとしたけど、今日の社長は引き下がらなかった。


「オレに何を隠してる?」