母親のように……
再び、メモに書かれた“佐伯陽子”の文字を見つめながら、あたしは決心した。
「あたし…佐伯先生に連絡してみます」
そして真っ直ぐ宮下先生を見つめながら、ふっと少しだけ微笑んだ。
あたしの微笑みを見て、宮下先生も安心したように“うん”と、1つ頷いた。
今回は、社長にも内緒で……あたし1人で佐伯先生を訪ねてみよう。
この時あたしは、そんなことを思っていた。
だってまだハッキリ分からないうちから社長に話しても、きっと社長は大騒ぎする。
……あたしの気持ちを尊重してくれてるとは言え、社長の本音は……今すぐにでも子供が欲しいって思ってることをーー…
あたしは知ってるから。
でもね?
自然とお腹に手を置きながら、あたしは心のどこかで願ってる。
“思い過ごしでありますように……”
こんなことを願っている時点で、あたしは有栖川の嫁として相応しくないのかもしれない。
そんなことを思いながら、あたしは久しぶりにゆっくりと眠りについた。
夢の中でーーーー……
誰かに頭を優しく撫でられたような気がする。
すごく温かくて、大きな手だった。
どこか懐かしい感じがしたその手は……
誰のモノだったんだろう?
「大丈夫だよ……」
ーー……そう聞こえた気がする。
あれは……ーーー。

