旦那様は社長 *②巻*


母親のように……


再び、メモに書かれた“佐伯陽子”の文字を見つめながら、あたしは決心した。


「あたし…佐伯先生に連絡してみます」


そして真っ直ぐ宮下先生を見つめながら、ふっと少しだけ微笑んだ。


あたしの微笑みを見て、宮下先生も安心したように“うん”と、1つ頷いた。


今回は、社長にも内緒で……あたし1人で佐伯先生を訪ねてみよう。


この時あたしは、そんなことを思っていた。


だってまだハッキリ分からないうちから社長に話しても、きっと社長は大騒ぎする。


……あたしの気持ちを尊重してくれてるとは言え、社長の本音は……今すぐにでも子供が欲しいって思ってることをーー…


あたしは知ってるから。


でもね?


自然とお腹に手を置きながら、あたしは心のどこかで願ってる。


“思い過ごしでありますように……”


こんなことを願っている時点で、あたしは有栖川の嫁として相応しくないのかもしれない。


そんなことを思いながら、あたしは久しぶりにゆっくりと眠りについた。


夢の中でーーーー……


誰かに頭を優しく撫でられたような気がする。


すごく温かくて、大きな手だった。


どこか懐かしい感じがしたその手は……


誰のモノだったんだろう?


「大丈夫だよ……」


ーー……そう聞こえた気がする。


あれは……ーーー。