旦那様は社長 *②巻*


宮下先生。


あたしの両親の最期に立ち会ってくれた先生。


そして……泣きじゃくるあたしの手をずっと握っていてくれた先生。


懐かしいーーー…


当時の様々な記憶がフラッシュバックしてくる。


思い出にふけるあたしの側で、宮下先生はさっきまで社長が座っていた椅子に腰掛けた。


「久しぶりだね」


「はい。先生にはあの時本当にお世話になりました。先生がいなければ、今のあたしはここにいなかったと思います…」


一緒に切ない記憶も蘇り、涙が頬を伝う。


あたしはその涙を両手で拭って、宮下先生にニッコリ微笑んだ。


「びっくりしたよ、まさかキミが有栖川家の嫁になっていたとはね…?」


「ははっ…すみません」


「いや、謝る必要はまったくないんだけど…
今幸せなら良かったよ」


幸せ…なのかな…?


「………」


「幸せじゃないの?」


俯いたあたしの顔を覗き込みながら尋ねる先生。


「…有栖川家の嫁は…想像以上に大変で…。
正直、覚えることがありすぎて…自信なくしてたとこなんです」


「そう……」


それっきり黙り込んでしまった先生。


でもこれが宮下先生なんだ。