宮下先生。
あたしの両親の最期に立ち会ってくれた先生。
そして……泣きじゃくるあたしの手をずっと握っていてくれた先生。
懐かしいーーー…
当時の様々な記憶がフラッシュバックしてくる。
思い出にふけるあたしの側で、宮下先生はさっきまで社長が座っていた椅子に腰掛けた。
「久しぶりだね」
「はい。先生にはあの時本当にお世話になりました。先生がいなければ、今のあたしはここにいなかったと思います…」
一緒に切ない記憶も蘇り、涙が頬を伝う。
あたしはその涙を両手で拭って、宮下先生にニッコリ微笑んだ。
「びっくりしたよ、まさかキミが有栖川家の嫁になっていたとはね…?」
「ははっ…すみません」
「いや、謝る必要はまったくないんだけど…
今幸せなら良かったよ」
幸せ…なのかな…?
「………」
「幸せじゃないの?」
俯いたあたしの顔を覗き込みながら尋ねる先生。
「…有栖川家の嫁は…想像以上に大変で…。
正直、覚えることがありすぎて…自信なくしてたとこなんです」
「そう……」
それっきり黙り込んでしまった先生。
でもこれが宮下先生なんだ。

