「わかった」
「ん」
真田くん、もとい祐輔と話をしているとそこへ割り込むように槻嶋の顔が突然あたしの目の前に現れた。
「ちょ!!」
あまりの近さにイスをガッと後ろに引く。
「おい、篠塚。
お前だけこの間提出の課題出てなかったんだけど?」
は?課題?
「え、なんのことですか」
課題のことなんてあたしは一言も聞いてない。
「テスト期間中に村岡に伝えておいてもらったはずだけど」
その言葉に百合の方を見やる。
「ちゃんとクラスみんなの前で伝えたわよ?」
まわりを見渡すとみんな頷いている。
「いや聞いてない聞いてない」
顔の前で手を振ってみせる。
記憶を辿ってみても、そんなのは浮かんでこない。
「…そういえば、ハルは英語のテスト終わった日だったから死にかけてたわね」
英語のテスト終わった日…。
確かにその日は全力を使い果たしてぐったりしながら帰って寝ちゃったかも。
それで起きたら槻嶋がいて…。
「…!
だったらあの時に言ってくれてもっ!」
槻嶋に向かって凄んでみせるけど、あいつはそんなのどこ吹く風と涼しそうな顔。
「あの時ってどの時?」
「だーかーらー、テストが終わった日にあんたあたしの…」
そこまで言いかけて、槻嶋があたしの隣りに住んでいることは誰も知らないし、それに加えてあたしの家に槻嶋が来たということを知られてはまずいということを思い出す。
百合たちはキョトンとした顔であたしたち二人の方を見ている。
「あたしの?」
あたしが言えないことをわかっているくせに、聞いてくるこいつは心底意地が悪いと思う。
