「村岡のとこはどこ行くんだ?」


ろくに話し合いに参加もせずにうつ伏せになっていると、近くから憎き男の声がした。


槻嶋の声を聞いた途端に心臓がとび跳ねたのだから心臓に悪い。


「あ、先生!!」

女子三人組は色めき立つ。


なんでこっちに来るかなー。
あっちに行ってろ、しっしっ。


槻嶋の顔を見ないで済むように、イスの向きを変えて苦笑いを浮かべる隼人と真田くんの方へ向き直る。


「…槻嶋先生、すごい人気だね」

「みんなあんなののどこがいいんだかね」

隼人の言葉にあたしは吐き捨てるように言った。


「篠塚は嫌いなの?槻嶋のこと」

真田くんが意外だとでも言いたげな声色であたしに問いかける。



「ちょっと真田くん勘弁してよ、あたしが仮面つけて教師してるようなやつ好きなわけないでしょー」


「仮面?」

あたしの言った仮面という言葉のに首をかしげる。

あー、キスされたことなんか言えないし、今までのことも言えないし……。


「ほらっ、そういう顔してんじゃん!!」

焦って言ったあたしの言葉に顔をしかめつつも、深入りはしてこなかった。


その間も楽しそうに会話を繰り広げる四人の声が聞こえてくる。


あたしにあんなことした分際で槻嶋もよく顔なんか出せるよね。


「でもなんだかんだいい先生だと思うけどね、俺は」

「あー教え方上手いしね!!」

男子二人は槻嶋の危険性を何もわかっていないんだからこんなこと言えるわけで。


「てーか篠塚さ、真田くんとかじゃなくて名前でいいよ」

「え?」

「あの三人も名前で呼んでるし、一人だけ名字だと変に違和感あるから」


百合、有美、瀬奈の方を指で示す。


…いつの間にそんなことに。