次の日の修学旅行の話し合いの時間にはすでに気分も沈んでいた。


「なんであいつも修学旅行に来るの?」

頬杖をつきながら、胡散臭い笑顔を浮かべた槻嶋をジロリと見る。


「うちのクラスの副担任なんだから当たり前じゃないの」

百合たち三人は興奮した様子で頬を赤くする。

…最悪。
なんでうちのクラスの副担任なんだろう。
言葉では嫌だ嫌だと言いつつも、頭の中はつい先日のあたしの部屋でのことが思い浮かべられる。



伏し目がちな目。

色気を含んだような低い声。

少しひんやりとした大きな手。

背後から感じた香水の香り。


すべてがフラッシュバックのようによみがえってくる。



「…ああー!!
なんでなんでなんでー!!」

あんな最低男のことなんか考えちゃうんだろ!!



グルグルといろんな思考が頭の中を支配する。



ジトーっと睨んでいると、あたしの恨みのこもったような目線に気付いたのか槻嶋がこちらをちらりと見てきた。


胡散臭い笑顔が途端にニヤニヤとした企みのある顔に変化した。



槻嶋から目線をはずして、組んだ両手を額に当てて、ひとつためいきをつく。



なんでもない、なんでもない。

あの時は勉強のしすぎで頭がおかしくなってたんだ。

そう、それだけ。