「なに?もしかして何かされるとか思ってる?」
面白そうにこちらを見ている槻嶋に顔をおもいっきりしかめる。
そうですけど。そうですけど何か!?
「自意識過剰もいいとこだろ…」
ボソッと呟いたその言葉をあたしは聞き逃さなかった。
ブッチーン。
あたしの頭の中で何かが切れた音がして、気がつくとあたしの足はエレベーターの中へ動いていた。
「…わかりやすいやつ」
口元を手で隠してクスリと笑うと槻嶋はあたしたちの部屋があるフロアのボタンを押した。
あたしは槻嶋と距離を取るように、なるべく隅に寄る。
その様子を見た槻嶋はニヤニヤしながら、こっちにジリジリと寄ってくる。
「そんなに距離取っちゃって…」
「ちょ、ちょっと!!こっちこないでよ!!」
まじで近寄らないでほしい。
あたしの背中を冷たいものが走る。
これ以上下がれるわけでもないのにあたしの足は下がろうと必死になる。
ニヤニヤ笑いがあと30センチというところまで来ると、あたしはカバンをギュッと抱きしめて顔を下に向けて小さく縮こまった。
