先生とあたし(仮)


「今日はありがとね」

景斗の家で夕飯までもごちそうになって、景斗に家まで送ってもらった。


「んー、お礼にちゅー「だからしないって」

「悠はケチだなー」

「いや、そういう問題じゃないでしょ」

「昔の悠は可愛かったのになー」


ニコっと笑う景斗に、あたしは呆れた顔を向ける。


「つか、テスト大丈夫そう?」

「うーん…正直微妙だけど赤点だけは取らないようになんとかする」


景斗にしっかりと教えてもらいはしたものの、ぶっちゃけ半分位しか理解してないと思う。


「あとは百合のヤマに期待する!」

「そっか。まあなんかわかんないことあったら連絡くれよ」


景斗と手を振って、マンションの前で別れてエレベーターのボタンを押す。



「はーるーかーちゃーん」


背後から聞こえた声にギクリとして振り向く。


「…槻嶋」

そこには口の端を上向きにして、あたしを見下ろす槻嶋が立っていた。
どこかに出かけていたのだろうか、手には車のキーらしきものが握られていた。



「槻嶋じゃなくて槻嶋”先生”だろ?」


「…」


なんでよりにもよって、こいつなんかと会うんだろう。

休日まで顔を合わせるなんて、今日はついてない。



エレベーターが1階に着いて扉が開く。


槻嶋はあたしを追い越して、エレベーターに乗り込む。


「おい、早くしろ」

「…いいです」


こいつとこんな狭いエレベーターの中で二人っきりなんかになってしまったら、何をされるかたまったもんじゃない。