「いつもごめんねー。
まだ寝てると思うから起こしてやって」
麻子さんはあたしに向かって片目をつぶってみせると、紅茶の入った二つのカップとケーキをのせたお盆を渡した。
おっ!!あたしの好きなケーキ屋さんのケーキ。
しかも大好物のいちごのショートケーキ。
ここのケーキはほんとにおいしいんだよね。
1日3食これでもいいくらい。
そんなことしたらお腹周りがやばくなるのはわかっているけど。
このケーキを出されちゃ仕方ない、景斗のことは許してやるかー。
こんなことで許せちゃう自分も結構現金なやつだと思う。
階段を上がって景斗の部屋の扉をそーっと開く。
「よくもまあこんなにぐっすり眠れるねえ」
小さく上下する布団に近づいて、上から覗き込むと気持ちよさそうに寝ている景斗がいた。
頭のてっぺん付近の髪の毛をチョンチョンと引っ張ってみたけど。
「……全然起きないし」
全く表情を変えずに眠り続ける。
昨日も遅くまで練習してたみたいだし、疲れてるんだろうな。
そう考えるとなんか起こすのも気が引ける。
