「あたし、カレーなら作れると思う」

声を普通の大きさに戻して景斗の顔を見上げる。


景斗が来れない日は今までに作ったことのある料理を自分で作ったりしてた。

その中でもダントツで作る回数が多いのがカレーなんだよね。



なんでかっていうと……作り置きできるから、なんだけど。



そのおかげでだいぶ普通のレベルに近づいたと思う。


「ふーん。じゃあ今日はカレーにするか!」


鼻歌を歌いながら横を歩く景斗を前に、あたしはいつの間にか槻嶋との間にあった出来事を忘れていた。





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「ん、うまくなったじゃん」


景斗の言葉にホッと胸をなで下ろす。


「よかったー」


作ったものをおいしいと言って食べてもらえるのは素直にうれしい。


景斗もあたしの言葉にそう思ったことはあったのかな。



あたしもスプーンを手に持ち、小さくいただきます、と言うとカレーに口をつけ始めた。



「なんか心なしか味付けも悠のおばさんのとこよりか、俺に似てない?」

「だってあたしの家のカレーってそんなに隠し味とか入れない普通のやつだもん。
でも景斗のやり方でやったらそれはそうなるでしょ」


あたしん家はお母さんがめんどくさいからって隠し味とか入れるような凝ったことあんまりしないんだよね。



だけど、景斗はうちのカレーとは違っていろいろ隠し味を入れてる。
麻子さんの影響なんだろうなー。