あたしが英語の係になってからというもの、これ以上槻嶋に関わりたくないというあたしの願いもむなしく槻嶋と接する時間が多くなった。



「ハル!!早く行こっ」

「何でよ~。ていうか、英語係なんて百合ひとりで充分じゃん」



原因のひとつには百合の存在もあるわけなんだけど。



「あたしひとりじゃあもフェロモンに勝てないっていうかー」



顔を少し赤らめながら言う百合に毎回のごとくため息が漏れそうになる。




百合のお願いを断ることもできないあたしは(なぜなら百合の小言がめんどくさいから)付き合うはめになってるってわけなんだけど。



「もうすっかり夏だねー」


2棟に向かう廊下からの窓の景色はすっかり緑一色になっていた。


「まあもうすぐ6月だからね」


校庭の桜はいつの間にか散ってしまって季節が移り変わろうとしていた。




あいつと知り合ってからもうすぐ3ヶ月になるんだなー。


裸見ちゃうし、キスされるし、いいことなんてひとつもないけど。



「てかもうすぐテストじゃん!!」


百合のその言葉にあたしの心は落ち込んでいく。


「もうどうしよー」


頭の中にアルファベットが流れ込んでいく。
あたしにとっては苦痛でしかないその記号。


「槻嶋先生の授業でもわかんないの?」

「あんなのわかるわけないじゃん」


槻嶋の授業がわかりやすいという評判は授業が始まってすぐに広まった。
大学時代に留学経験もあるとかで発音の本場さながらだし、説明の仕方も丁寧に教えてくれているらしい。