先生とあたし(仮)


景斗をジーッと見つめる。

「なにしてんだよ」

「………」

「……。わかった。今日だけだぞ?」


景斗はあたしの言おうとしたことがわかったらしく、台所の方へと消えて行った。


オムライスができるまでゆっくりしよ。



テレビをつけるとバラエティー番組がやっていたので、なんとなくつけたままにする。


ふと、隅の開いてるダンボール箱に目を向ける。
中から洗剤セットが覗いてる。
お母さんが引っ越しの挨拶にって持たせたやつ。
今時、引っ越しの挨拶ってするのかな?


今度、隣の部屋の人に挨拶しに行かなきゃな。
あたし初対面の人に挨拶とか苦手なんだけど。

あたしの部屋が突き当たりでよかった。



「悠、できたよ」

部屋のドアを開けて、オムライスを両手に持った景斗が入ってくる。


「あ、ありがと!!」

黄色くてフワフワのオムライス。
口に入れたときの感触を思い出して、思わずにやけちゃう。


「どうぞ召し上がれ」

「いただきまーす!!」

スプーンを手にすると、オムライスを一口。



「~っ!やっぱり景斗は天才だよー!」

「悠のために作ったから美味いんだろ」

景斗は何気なくサラーっと言うけど、これって恥ずかしい台詞じゃない?

「……よくそういう台詞が普通に言えるよね」




オムライスを食べ終わって二人分の食器を洗う。


「じゃ、俺帰るわ」

カバンを肩からぶら下げて、玄関で靴を履く。


「来れる日は連絡する。
悠もできるだけ自炊できるように頑張れよ」

「わかった。
じゃあまた明日ね」