しばらくして、菜美たちは真由・臣哉・雛と共に寮の食堂のテーブルにいた。


「そうそう、君哉聞いてよ! コイツ福岡県予選の決勝でタイブレークに追い込まれた挙げ句、マッチポイントでダブルファーストサーブ打ったんだよ? あれ入ってなかったら絶対負けてたし…」
真由は臣哉を呆れた目で見ながら言った。


福岡にはセレナードが2つあったため、人数の多いテニス部門はトーナメントを行い、九州大会に参加できる人数まで減らしたのだ。


テニスは1ポイントに2回サーブを打つことが許されているため、最初のファーストサーブはスピード重視で回転をあまりかけないフラットサーブ ファーストサーブをミス、つまりフォルトした場合は安定重視で回転を多くつかうセカンドサーブを打つのが基本である

ダブルファーストサーブとは、40-0などポイント差に余裕がある時かつ試合の序盤にセカンドサーブでもスピード重視のサーブを打つコトである。


1ポイントが大きな差を生むタイブレークでダブルファーストを打つコトなどまずありえないのだ。


「別に良いだろ?勝ったんだから」
臣哉は得意げに笑いながら言った。瞳は少し感心したように笑ったが菜美は笑えなかった。