短編集





それじゃ、命令じゃないじゃん



「…一応って、何よ」




送ってもらえるのが嬉しい癖に、可愛くないことを言ってしまう



「ほら、行くぞ」



そんな私の言葉を無視して、私の手を引っ張っていく



「…おい、どっちだよ」



校門を出て、辰巳君が私を見て聞いてくる




「結崎駅の近く」

「一緒か」

「…本当に?」

「高校入ってから引っ越してきた」

「そ…うなんだ」




平然を装いながら言ったけど、内心は凄い嬉しかった



もしかしたら、朝も一緒に行けるかもしれない
何て思いながら歩いていたけれど、



辰巳君は何も話しかけて来ないからずっと無言のまま



結崎駅に着いた。



話すことは無かったけど、私は辰巳君と一緒にいれるだけで嬉しかったんだ



結局何も話さないまま、家まで送ってもらった。



「あのさ、怪我心配だから病院行ってね」

「あー…たいした事ねぇよ」

「だけど…っ…お願い」



もしも酷い怪我なら心配だもん



「…分かった行くよ」



しょうがないな、って感じで言った



「じゃあ、また明日。朝練で」

「あ、あぁ」





それだけ言うと、辰巳君は帰って行った